研究内容

光や電気のチカラで、水やCO2を有用物質へ

前田研究室では、半導体光化学・触媒化学・材料化学・電気化学を基盤にそれらを融合し、水や二酸化炭素のような身近で安定な分子を、水素や有用化学品へ変換する研究を行っています。特に、新しい物質、新しい反応場を創り出し、そこから新しい化学・面白い化学を見つけることを目指しています。

人工光合成複合アニオン超セラミックス水分解CO2変換光触媒operando計測

現在の主な研究テーマ

1

新しい無機材料をつくる

― 複合アニオン化合物から超セラミックスへ

金属酸化物中の酸化物アニオンO2-の一部をN3-、F-、H-などの異種アニオンに置き換えると、電子構造、結晶構造、化学反応性を大きく変えることができます。前田研究室では「複合アニオン」というコンセプトを基盤として、従来の合成法では得にくい準安定材料や二次元材料を開拓しています。さらに近年は、分子性ユニットを含む無機材料を「超セラミックス」として捉え、無機固体と分子の境界領域へ研究を広げています。
酸フッ化物
Pb2Ti2O5.4F1.2など:可視光応答・水分解
層状酸窒化物
K2LaTa2O6Nなど:二次元構造と異方的電荷移動
酸水素化物
BaTiO2.5H0.5など:LabileなH-を活用したCO2電解触媒能・準安定相への変換
超セラミックス
"分子"を含む無機材料:分子性ユニットによる特異な触媒作用
2

分子と半導体を組み合わせる

― それぞれの長所を一つの光触媒へ

分子は光吸収や触媒反応を精密に設計できる一方、半導体は電荷輸送や安定性に優れます。これらを踏まえて、色素、分子触媒、酸化物ナノシート、酸窒化物、ポリマー状窒化炭素などを組み合わせ、単独の材料では実現しにくい人工光合成反応を目指しています。最近では、単に材料を組み合わせるだけでなく、界面で電子がどの方向へ、どれくらいの速度で動くのかを理解し制御することを重視しています。

色素増感型水素生成・水分解

Os錯体/ニオブ酸ナノシート

Ru/Os錯体などの光増感剤と酸化物ナノシートを組み合わせ、長波長可視光の利用と逆電子移動の抑制の両立を探求します。

分子触媒/半導体CO2還元

Ru錯体/Ag/PCNハイブリッド

Ru–Re錯体や分子性触媒と半導体を接合し、高選択的なCO2還元と界面電子移動の高効率化を目指します。

3

CO2を資源に変える

― 光触媒から電気化学まで

CO2は安定な分子ですが、適切な触媒の存在下でエネルギーを与えると、一酸化炭素やギ酸などの化学原料へ変換できます。前田研究室では、無機半導体、分子触媒、配位高分子、MOF、複合アニオン材料など、多様な物質群をCO2変換へ展開しています。また最近では、光触媒だけでなく電気化学的CO2還元にも研究を広げています。

光で還元する

光還元

分子/半導体ハイブリッド、配位高分子、金属酸水酸化物などを用い、可視光下での高選択的なCO2変換を目指します。

電気で還元する

電気化学還元

分子を含む無機材料「超セラミックス」に着目し、高速・高選択的CO2電解につながる新しい反応場を探索します。

4

水を水素と酸素へ分解する

― 人工光合成の原点をさらに深く

水分解は、光エネルギーを水素という化学エネルギーへ蓄える人工光合成の基本反応です。可視光を利用できる半導体光触媒、色素増感型光触媒、光電極を開発するとともに、水素生成と酸素生成のそれぞれを支配する材料・界面・触媒の役割を調べています。性能指標(反応速度)だけでなく、なぜその材料が働くのかを明らかにすることを研究の重要な目標としています。
水素生成
電気化学還元
酸フッ化物、酸窒化物、色素増感系
酸素生成
電気化学還元
酸フッ化物、酸水酸化物、超セラミックス、ナノ粒子
5

反応をその場で「見る」

― なぜ働くのかを原子・電子レベルで理解する

新しい触媒・光触媒を見つけるだけでは、研究は終わりません。X線回折、電子顕微鏡、XPS、XAFSなどによる構造・電子状態解析により、活性な触媒・光触媒の特性を調べます。さらに、実際の光照射中・電気化学反応中に何が起こっているのかをin situ / operando XAFS、超高速レーザー分光などを用いて追跡します。最近では、光触媒反応そのものを活用して活性触媒の素性を解き明かす試みもはじめています。こうして得られた知見を、次の材料設計へフィードバックします。
酸素生成反応中の懸濁系CoOx触媒のin situ XAFS測定
非電気化学環境における酸素生成触媒の擬過電圧評価

研究室で経験できる研究

一つの学生テーマですべてを行うわけではありませんが、前田研究室では、材料合成、光触媒・電気化学反応、各種分光・構造解析を組み合わせて研究を進めます。SPring-8やKEK-PFなどの大型放射光施設、国内外の共同研究先での電子顕微鏡観察、超高速分光、理論計算など、研究室外の研究者・学生と協働する機会も豊富にあります。

Materials新しい無機材料・分子性材料をつくる。それらの新しい合成ルートをみつける。
Interfaces分子と固体、触媒と半導体をつなぐ。電子移動反応に有利な界面を設計する。
Reactions水やCO2を光・電気のチカラで変換する。
Mechanisms実験・理論の両面から原子・電子レベルで反応を理解する。

研究テーマは「答えの決まった実験」ではありません

それぞれの研究テーマには、ある程度決まった「型」のような進め方があります。それでも、「型」を単純に当てはめて実験することがすなわち研究である、というわけではありません。新しい材料をつくり、予想外の現象に出会い、その理由を考え、必要な実験を組み立てる。場合によっては、他者と協働して課題と向き合う。多くの試行錯誤を含めた、これらの繰り返しを通じて、成熟した研究者になることを目指します。